2024年3月に日本の株価はバブル期の最高値を超え、いよいよ日銀もマイナス金利政策を解除し、金利を引き上げることを決めました。日銀が金融緩和政策を解除した今、短期金利が上昇すれば、住宅ローンの変動金利も上がり、毎月の支払い負担額が増える可能性があります。そこで、今回は住宅ローンの金利の特徴や金利を選ぶ際のポイントについて、ご紹介したいと思います。
住宅ローンの金利には、金融機関が定める「基準金利(店頭表示金利)」と、基準金利(店頭表示金利)から、所定の金利優遇または上乗せを行って実際に適用される「借入金利(適用金利)」があります。
住宅ローンの金利は金融機関や商品ごとに異なり、また返済期間や自己資金比率などの借主の条件によっても変動する場合があります。一般的に住宅ローンの金利は、マイカーローンやフリーローンなどの無担保ローンの金利と比べて低いことが多いです。これは住宅(不動産)が担保となることや、ローンの利用目的が居住用住宅に限定されることなどがあるためです。
住宅ローンの金利タイプには、大きくは「固定金利型」「変動金利型」「固定・変動金利選択型」に分類されます。
①固定金利型
「固定金利型」は、借入当初の金利が返済期間を通して適用され、返済期間中に金利が変動しない住宅ローン金利になります。返済額が借入時点で確定されるため、返済予定が立てやすいメリットがあります。借入が同じタイミングの場合で比較すると、借入時点での金利は「変動金利型」「固定・変動金利選択型」に比べて高くなる傾向があります。なお、所定の期間(住宅ローンの場合、通常10年間)経過後に、あらかじめ定められた金利に引上げられる「段階金利型」も固定金利型に分類されます。
②変動金利型
「変動金利型」は、一定期間ごとに適用金利が見直しされ、返済期間中に金利が変動するタイプになります。一般的に変動金利型の住宅ローンは固定金利型に比べ、借入当初の金利が低いメリットがあります。ただし、借入時点では返済額が確定せず、返済期間中に金利が上昇し、借入当初の想定より返済額が増加するおそれがあります。
変動金利型の住宅ローンの適用金利は通常6か月ごとに見直しされますが、元利均等返済方式の場合は、返済額の見直しは5年ごととすることが一般的です(これを5年ルールといいます)。この場合は、返済額の見直しが行われてから5年間は、適用金利が上昇しても毎月の返済額は上昇しません。
また、5年経過後に見直しされる返済額は、見直し前の返済額の125%(1.25倍)が上限になり、毎月の返済額負担の大幅な増加を防ぐ仕組みがあります(これを125%ルールといいます)。
5年ルールや125%ルールは、金利の変動による返済額の大幅な増加によって、ローン返済ができなくなるリスクを軽減する仕組みですが、金利が短期間のうちに急激に上昇した場合に、返済額のうちの元金返済部分の大幅な減少や未払利息が発生するおそれがあります。
③固定・変動金利選択型
「固定・変動金利選択型」は、借入当初一定期間は固定金利が適用され、固定期間終了時に自動的に変動金利が適用される、または再度一定期間の固定金利を選択できるタイプです。また、当初は変動金利でスタートし、借主のタイミングで一定期間の固定金利を選択することも可能です。
選択できる固定金利には、「3年固定金利」「10年固定金利」などがあり、一般的に固定金利期間が長いほど適用金利は高くなります。固定金利期間中は金利や返済額が変動しない特徴があり、期間の異なる固定金利と比較的金利の低い変動金利と組み合わせることが可能な金利タイプになります。
①固定金利型 |
②変動金利型 |
③固定・変動金利選択型 |
|
特徴 |
借入時に返済期間中の適用金利が確定 |
金利情勢の変化により、返済期間中に適用金利が変動 |
一定期間の固定金利と変動金利型が都度適用、選択ができる |
メリット |
・借入時に返済期間全体の返済額(総返済額)が確定する。 |
借入後に基準金利が低下すると返済額が減少する。 |
・固定金利期間中は返済額が確定できる。 |
デメリット |
借入後に基準金利が低下しても返済額は減少しない。 |
・借入後に基準金利が上昇すると返済額は増加する。 |
・固定期間終了後に基準金利が上昇すると返済額が増加する。 |
①金利タイプ別のメリット・デメリットを理解する
住宅ローンの金利タイプには、それぞれメリット・デメリットがあります。その両方を考えたうえで、ご自身が何を重要視するのか、デメリットは許容できるものかをよく考え、ご自身にあった金利タイプを選ぶことが大切です。
一般的には、固定金利型は、借入時点で返済額を確定させたい方などに向いています。変動金利型は、金利上昇による返済額の増加に対応できる余裕があり、かつ、当初は比較的低い金利で借入れを行い、返済額に余裕を持たせたい方に向いています。
②金利タイプごとの返済総額の差をシミュレーションする
金利タイプごとに、毎月の返済額や総返済額がどのくらい変わるのか、事前にシミュレーションして確認してみることも大切です。変動金利型であれば、返済期間中に金利が上昇するケースも想定してシミュレーションを行い、金利上昇によって返済額がどう変わるのかも確認しておくとよいでしょう。
住宅金融支援機構などの金融機関のシミュレーションツールを利用すれば、複数の住宅ローンの比較や金利上昇のパターンを変えて返済額を試算することができます。
③ライフプランに合わせて金利タイプを選ぶ
夫婦の一方が働くのか共働きなのか、お子様の人数や年齢、教育プラン、将来住み替えを考えているのかなど、今後のライフプランを考慮して金利タイプを検討することも大切です。
例えば、子どもの教育費などにまとまった出費が見込まれる場合などは、返済計画が立てやすい固定金利型を選択する考え方もあります。固定金利型であれば、支出が安定するため、貯蓄の見通しも立てやすくなります。
金利上昇リスクをある程度許容できれば、変動金利型を選んで借入当初の返済額を抑えるのもよいと思われます。返済額を抑えた分は貯蓄・運用などに回して資金を確保しておき、将来家計に余裕ができたタイミングや、金利が上昇に転じたタイミングなどに繰上返済することで、総返済額や金利上昇による返済額の増加を抑えることができます。
固定・変動金利選択型の住宅ローンでは、返済期間の途中で変動金利から固定金利へ変更できます。近い将来金利の上昇が見込まれる場合や、ライフプランの変更があった場合など、固定金利選択することで、将来の金利変動リスクを抑えることもできます。
変動金利から固定金利への変更では、金利変動リスクを抑えられる反面、通常は固定金利のほうが金利は高く、変更したタイミングで返済額は増えることになります。金融機関によっては、金利タイプの変更に手数料がかかることもあります。
インフレ(物価が継続的に上昇)時代には基本的に金利も上昇傾向となります。金利の上昇によって、家計で一番影響を受けるのが住宅ローンです。既に変動金利で住宅ローンを利用されている方については、場合によっては固定金利への切り替えなど返済方法の見直しを検討する必要もあるでしょう。また、今後住宅ローンを検討される方についても、各金利タイプのメリットやデメリット、返済期間中の対応などについて、よく理解したうえで、ご自身にあった金利タイプを納得して選ぶことが大切です。住宅ローンの金利タイプについては、ご自身でも簡単にシミュレーションをすることができますが、わからないことや判断に迷うことがあれば、そのままにせず、お近くのもみじ銀行 住宅センター+(プラス)までお気軽にご相談ください。