作文コンクール 
くらしの文集

 

6年生の作品

6年生  特選

死の怖さを知らない君へ

吉浦小 六年 橘   草 佑

「こんな事が現実であったなんて……。」
 四月に六年生になったぼくたちは、いつもにぎやかで、毎日楽しく過ごしていた。六年生教室は笑いであふれていて、いつも楽しい。
 そんなぼくたちは総合的な学習の時間で平和について学習することになった。始めはタブレットで調べ学習をした。ぼくは原爆について調べることにした。
 すると、折りづるのことが出て来たので、(原爆と折りづるって、何がつながっているんだろう。)と不思議に思った。調べるうちに、(平和公園は平和をいのる所なんだ。原子爆弾が関係しているんだ。)と、色々分かってきたことはあったが、まだまだ分からないことも多いので、(平和公園に行ってみたい。)と思うようになった。このときのぼくは、原子爆弾のおそろしさをまだ、知らなかった。
「お母さん、今度平和公園に行くから、お弁当を作って。」
と言うと、
「原爆の怖さ、知ってきんさいよ。」
と言われた。それを聞いてぼくは、(原爆ってそんなにおそろしいものなのか?ちょっと怖いな。)と思った。
 行きのバスの中では、みんなでおしゃべりをしていた。バスから出たしゅん間、あたりはとても静かだった。みんなもさっきのにぎやかさはなくなり、とても静かになっていた。
 原爆資料館に入ると、外国の人がたくさんいた。外国の人は、通訳機のような物を身に付けていて、悲しい顔をしている。ぼくも近くに行ってみると、そこには、一枚の絵がかざられていた。(これは何だろう。)と思いながら見ていたが、はっと息をのんだ。(これは、人のはだがただれ落ちているんだ。この絵のような地ごくが広島……。)
うそかと思ったが、そのとなりも、そのまたとなりも全て皮ふがただれ落ちている人がえがかれていた。うそではないことに背筋がこおった。これが現実だと思うと、悲しい気持ちでいっぱいになった。
 それだけではない。次に見た展示物は、黒いお弁当箱だった。中には黒いものがある。お母さんが作ったおかずだった。ぼくは今朝お母さんが作ってくれたお弁当を思い出した。(原爆一つでこんなめちゃくちゃになるなんて。)
 その他にも資料館には、残こくなものがたくさんあった。ぼくは思った。(原爆はたった一つでこんなにたくさんの物を……。いや、物だけじゃない。人も、人の気持ちも全て消し去ったおそろしいものなんだ。)と。
 資料館を出ると、たくさんの人が暗い顔をしていた。きっと、みんなぼくと一緒で、これが現実と知って悲しかったのだと思う。
 平和公園では資料館だけでなく、原爆ドームや韓国慰霊碑など、色々なものがある。ぼくたちは実物を見て学習した。それだけでなく、語り部さんから原爆が落とされた当日の話もくわしく聞くことができた。今まで学んできたことを、参観日にお家の方に伝えたいというのがぼくたちの目標だったので、それに向けて準備を始めた。
 原爆はアメリカが悪いのだと思っていたけれど、日本も悪かったことを、学習して初めて知った。思っていたよりも原爆の被害が大きく、怖くて驚いた。その怖さを知らせたいと思った。
 そして、資料館でぼくたちと同じくらいの年で亡くなった、佐々木禎子さんのことを初めて知った。被爆後、元気に過ごしていた禎子さんは、数年後に原爆の後遺症で白血病になり、亡くなった。この禎子さんの思いを伝えたいと思い、ぼくたちの班は劇にして発表した。
 お家の方に原爆のおそろしさが伝わったかどうかは分からない。きっと伝わっているだろうと思っている。しかし、ぼくが本当に伝えたいのは、今の子ども達だ。今の子ども達は平気で「バカ」「死ね」などという言葉を使っている。この言葉はどれだけ悲しい発言かを考えてほしい。
 ぼくたちは平和学習をして、今まで知らなかったことをたくさん知った。知ることで、今まで見ていたものが違って見えたり、今まで感じなかった気持ちが生まれた。ただ、学ぶだけでは大きく世界を変えることができない。広島の子どもは、どの県よりも平和について多く学習をしているのではないかと思う。そんな広島に生まれたということは、平和の大切さや原爆のおそろしさを伝えていく使命があるのではないだろうか。
 ぼくはこれから、親せきやいとこにも学習したことや自分が感じたことを伝えていきたいと思っている。そして、自分の周りの人だけでなく、まだ、この怖さを知らない人にも伝えていける人になりたい。広島に生まれた子どもとして。

楽しく平和な日常を過ごしていた橘さんが、原爆や戦争の残酷さを知って心情が変わっていく様子が丁寧に表現されている作品です。
 原爆資料館の展示品や語り部さんの話、被爆した佐々木禎子さんのことなどを実際に見たり聞いたりしたことで橘さんが「死の怖さ」を知っていく様子も細かく描かれていて、読み手にも戦争のおそろしさが伝わってきました。
 終わりに橘さんが決意しているように、「広島に生まれた子どもとして」平和の大切さや戦争のおそろしさを伝え、広げていくことを願ってやみません。

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