作文コンクール 
くらしの文集

 

6年生の作品

6年生  特選

田植えと稲かり

長迫小 六年 松 田   朔

「シャッ、シャッ。」
 十月の初め、ここは焼山の田んぼです。母の知り合いにさそっていただいて、稲かりに来たのです。ぼくにとって、人生初の稲かりです。手にかまを持ち、腰をかがめて稲のくきを切るのですが、稲はふつうの草よりも十倍ほどかたく、力を入れないと切ることができません。しかし、母の知り合いは、軽い力でリズミカルに稲を刈っていきます。その音がシャッ、シャッ、なのです。ぼくの何倍も速く、力強く稲を束ねながら進んでいくその人に負けまいと、ぼくは何本も稲を刈っていました。しばらくすると、
「刈るの、速くなったじゃん。」
と田んぼの向こうの方から声がかかりました。
「上手に刈っとるねえ。」
とこちらの方からも言われ、この上なくうれしい気持ちになりました。
 この日、慣れない重労働をしたせいで、ぼくはへとへとになりましたが、この後に飲んだお茶も、食べたご飯も、最高においしく感じました。
 それから時が過ぎ、今年も六月の半ばになり、田植えの時期を迎えました。ぼくは、稲かりの時と同じ場所にやってきました。今度は田植えにさそっていただいたのです。田植えも、ぼくにとっては人生初。とてもむねがわくわくしています。目の前には、空の色を映した田んぼが、苗を植えられるのを待っています。今日も、きっとへとへとになるだろうなと思っていました。
 ぼくは、あせる気持ちをおさえながら、くつ下をはきました。その方が、ぬかるむ田んぼの中で歩きやすいそうです。そして、ぼくは、おそるおそる田んぼの中に足を入れました。泥があまりにもやわらかくて温かいので、とても気持ち良かったです。
 すぐに、お母さんの知り合いに、何をすればよいかたずねると、
「今、植えてある苗と苗の間が九十センチだから、三十センチ間かくになるように苗を植えていって。」
と教えてもらいました。また、
「苗を親指と人差し指で持って、苗の根を小し泥に入れて、周りの泥をかぶせて。」
とも教えてもらいました。
 教えてもらった通りにやろうとがんばりましたが、一列終わった時に後ろをふり返ると、曲がりに曲がっていました。いっしょに作業をしているお母さんの方を見ると、とても真っすぐに植えてあって
「すっごく上手だね。」
とほめられていました。
 ぼくは、何だかとてもくやしくなり、こつをつかむために田植え用の定規まで借りて田植えをしました。そのおかげか、始めのときよりは上手になりました。
 また、苗の洗い方も教わりました。苗には、土だけでなく、雑草が付いているので、それを落としてから植えるそうです。そうしないと、植えた後や田から水をぬいた後で雑草が生えてくるそうです。でも、苗の根を傷つけずに雑草を取るのは、慣れるまでは大変で難しい作業でした。
 いつの間にか日がくれてきていました。五時過ぎでした。改めて自分が植えた場所を見返してみると、何だかうれしくなりました。農家さんが
「松田さん、ありがとうございました。さあ、上がってください。」
と言われ、ぼく達の田植えは終わりました。時間がものすごく早く経ったように感じましたが、やっぱり体はへとへとになっていました。近くの小川でみんなで足を洗うと、泥といっしょにつかれまで流れていくようでした。昨日からしていた田植えは、明日もするそうです。
 田んぼをよく見ると、たおれている苗がいくつもありました。心配になってきくと、
「大きくなったら、ちゃんと根を張って立つから、大丈夫。」
と教えてくださいました。ぼくは、(稲も人間と同じだ。)と思いました。
 その後、飲んだジュースは格別でした。
 今回の田植えで感じたことは、米作りをしている方の大変さと努力です。ぼくは、今までそれを知らずにお米を食べていたけれど、実際に体験してみると、今あるお米とお米を作ってくれた人に、感謝をしながらお米を食べたいと思います。日本の文化に触れることができて、よい経験になりました。また、格別のジュースを味わいたいと思います。

「シャッ、シャッ」という稲をかる音、「ふつうの草よりも十倍ほどかたく」という例え、「空の色を映した田んぼ」という表現を使うことで、読み手にも松田さんが体験した情景が目の前に広がるような工夫がされています。田植えの場面では、初めてでわくわくする気もちや上手くいかずにくやしい気もちが書かれており感情の変化もよく伝わってきました。
 秋には、植えた苗が実り二度目の稲かりをするのでしょうか。松田さんにしかできない体験や思いを大切にして頑張ってください。

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