作文コンクール 
くらしの文集

 

6年生の作品

6年生  特選

私が連れて行く

白岳小 六年 上福浦 桃 香

「パアーン。」
私は審判係だ。徒競走で四番目にゴールした子を等旗の前へ連れて行くことが仕事だ。連れて行く時に絶対やってはいけないことは、自分が担当する順位ではない子をまちがえて連れて行くことだ。もし、一番にゴールした子を、自分の不注意で四番目にゴールしたことになってしまったら、得点に影響がある。何より、走った子とそのお家の人がショックを受けるだろう。だから、担当の先生から、絶対にまちがえないようにきびしく言われていた。想像以上に責任重大で、正直、私にこの仕事が務まるか不安でいっぱいだった。
 まだ運動会の練習を行っているころ、私はお母さんに相談してみた。
「お母さん、審判係になってね。かけっこで四番目にゴールした子を連れて行くのが仕事なんだけどね、まちがえそうで不安なんだ。」
お母さんは、
「まちがえても仕方ないじゃん。がんばりんさい。」
と言った。お母さんの言葉が私にはすっと入ってこなかった。(お母さんはそう言うけど、本当に仕方ないですませていいのかな。)私は考えたが、私なりの答えが出てこない。(考えても仕方ないし、人間なんだから誰だってまちがえることはあるよね。)自分に言い聞かせるようにそのころは思っていた。
 運動会当日、一年生のかけっこが始まった。連れて行くことが一番むずかしいのは一年生だ。ゴールしたことに気付かず、そのまま走り続けたりするからだ。ピストルの合図でスタートを切った一年生達が、どんどんゴールに近づいてくる。失敗しても仕方がないからがんばろうと言い聞かせながら、ゴールを待った。四番目にゴールする子を一生懸命見た。一回目は上手くいった。それからもまちがえることなく、ゆうどうすることができた。(思ったよりもできるじゃん。この調子。)係の仕事になれ、気が緩んでしまった。問題は、七組目の人たちが走ってくるときに起きた。ゴールする所までは、四番目の子が誰か分かっていた。ゴール直前、その子がみんなにまぎれてしまったのだ。走ってきた一年生だけでなく、他の審判係もおり、ごった返している。顔もはっきりとは分かっていなかったため、どの子が四番目にゴールしたか分からない。その時、全身の血の気が引いていくのが分かった。とりあえず、残っている子を連れて行った。罪悪感でいっぱいだ。(どうしよう。まちがえてしまったかもしれない。でも、一生懸命やったし仕方がないよね。)自分に言い聞かせた。
 その後の私は、仕事が手につかない。順位をまちがえてしまったかもしれない子のことばかり考えていた。(あの子、お家の人にがんばっている姿を見てもらいたくて、一生懸命走っていた。私のせいで、本当は三位だったのが、四位になってしまっていたらどうしよう。)
 私は、気が付いた。(人間だからまちがえても仕方がないのではなくて、人間だからまちがえないようにすることができるという考えの方が正しいのではないか?)その時、私の心に一筋の光が差し、心が太陽のように燃えてきた。(四番目にゴールした子を私が責任をもって連れて行くんだ。これが私に任された仕事なんだ。みんなに安心して、全力で走ってもらわなればいけないんだ。)
 ふっきれた私は、まちがえることなく、一年生の徒競走を終えることができた。何だか仕事が楽しくなっていた。その後に続く他の学年の徒競走も、絶対に私が四番目にゴールした子を連れて行くんだと、言い聞かせながら仕事に取り組んだ。
「がんばったね。こっちだよ。私についておいで。」
そう声をかける私の後についてくる一年生の笑顔が今でも忘れられない。
 運動会での失敗を通して、自分の仕事に責任をもつことの大切さを学んだ。誰しも失敗する可能性はあるが、自分の準備次第では、限りなく低くすることができる。
「人間だからまちがうのではなく、まちがわないように努力することができる。」
 この言葉が私の座右の銘だ。

運動会の審判係の役割を果たす様子を通して、自分の仕事に責任をもつことの大切さが、丁寧に表現されています。(誰だってまちがえることはあるよね。)から(まちがえてしまったかもしれない。でも、一生懸命やったし仕方がないよね。)となり、(ゴールした子を私が責任をもって連れて行くんだ。)と、本番でのアクシデントをきっかけに上福浦さんの心の動きとともに、成長していく様子が鮮明に描かれ、思わず応援したくなります。
 これからも、責任感ある上福浦さんの活躍を願っています。

前のページに戻る

もみじ銀行

Copyright(C)  THE MOMIJI BANK, Ltd. All Rights Reserved.