6年生 もみじ銀行賞
ことばでしっかり伝える
仁方小 六年 岸 菜 悠 眞
「何を言っているか、分からないよ。」
ぼくが学校の出来事を母に話すとよく言われていた。
ぼくはちゃんと話をしているつもりだし、今日楽しかった話をたくさん聞いてほしいのに、何でそんな悲しいことを言ってくるのだろう。(どうしたらいいんだ。こっちの気持ちも考えろ。)と心の中がもやもやしていた。
母は母で心配してくれていたみたいで、いろんなところに相談してくれて、ぼくは三坂地小学校のことばの教室に行くことになった。
ぼくは、最初は理解していなかったけれど、ことばの教室の先生に調べてもらい、「か行」と「た行」がうまく発音できていないことが分かった。だから、自分では、「学校の国語でね。」と言っているつもりが「だっとうのとくど」と聞こえていることと、話の語尾をごまかしてあやふやにしゃべるくせがあることが分かった。
ぼくは、今まで何の疑いもなく相手にきちんと伝わるように話していたつもりだったのでショックだった。母以外の人には何も言われなかったので、友達はみんなぼくの口ぐせに気付いていたけれど、ぼくが傷つかないように優しさで気付かないふりをしてくれていたのかなとか、もしかしたら本当はかげで笑っていたのかなとかいろんな感情が出てきて、考えれば考えるほど心細くなり悲しくなった。
どうしよう…。学校の授業で発表する時にも急に人の目線が気になり、手を挙げられなくなったし、友達と楽しい話をしていても、何か心の中で引っかかる感じがしたし、笑っていても顔が引きつってしまうようになった。
ことばの教室の先生とは週に一回、舌の動かし方のコツとか国語の教科書の音読をていねいに練習した。家でのトレーニングのやり方も教えてくれた。
「大じょう夫よ。ちゃんとトレーニングしたら治るからね。」
と言ってもらい、安心していた。
けれど、と中では、いやだな、こんなことやって意味あるのかなと思い、めんどくさくなってさぼってしまった。そのとき、(出た。)と思った。ぼくは、いつも学校の勉強も、はじめはやる気満々で頑張ろうと思っていても、もういいやと積極的にやることをやめ、しぶしぶやったり、中と半ぱでやめたり、努力をしなくなってしまうくせがある。そんな自分に腹が立つ。
「自分で治そうと思ってトレーニングをしないと、やらされて適当にやっても治らないよ。」と母に言われた。(そうだよな。)と思った。
それからは、ことばの教室の先生の「必ず治るよ。」という言葉を信じ、練習を重ねて結果がでるようにやる気スイッチをオンにして努力した。
何回もくじけそうになったけれど、思ったより早く、ことばの教室を卒業できることになった。最後の日、これからの目標を決めた。
「自分の言葉で自分の思いや意見を相手に伝わるように話す。」
そして、六年生になってことばの成果を発揮できる絶好のチャンスがおとずれた。ぼくは新しく仁方小へふ任してきた先生へのあいさつを、全校児童の代表としてすることになった。以前のぼくなら(いやだな、はずかしい。)と思っていただろう。でも、今のぼくならできる気がした。
けれど、視線を感じながら人前で話すことは、思ったよりも勇気がいる。家で何度も練習を重ね、本番ではきん張しながらもマイクを持ち、堂々と話すことができた。苦手な気持ちは消えていた。ちょう戦してよかったと自分の成長を実感した。精一ぱいやったので達成感があった。その日の出来事を話すと、
「はっきり相手に伝わるように話せてるよ。」
と、いつも厳しい母がうれしそうに聞いてくれた。たくさん心配してくれたんだなと思うとうれしかった。ことばの教室の先生、担任の先生、家族などたくさんの応援団がいたことを教えてくれた。無事に終わって安心したと同時に体の力が抜けていくのが分かった。
今回のことでうまく発音ができるようになった事以外にもいくつかうれしい発見があった。
ぼくの周りには、たくさん応援してくれている人がいる事。ぼくのしゃべりをばかにせず、ずっと一緒にいてくれたたくさんの友達がいる事。
ぼくも、もし友達が不得意な事があって不安なことがあっても、良いところを見つけて、応援してあげたい。そして、自分で目標を決めてチャンスがあれば何にでもちょう戦していきたい。みんなを引っぱっていけるような人になりたいと強く思った。
いつも一緒にいてくれてありがとう。
評
岸菜さんが、言葉の学習やトレーニングを通して成長していく様子が、丁寧に表現されている作品です。
トレーニングを続ける中で、自分の短所に直面しながらも「やる気スイッチをオン」にして頑張っている岸菜さんの思いや様子がしっかり伝わってきて、こちらも読みながら元気をもらいました。
また、自分の頑張りだけではなく、応援し続けてくれた周囲の人との関わりが、岸菜さんの成長につながっているという感謝と前向きな気持ちが表現されており、心があたたかくなります。これからも、さまざまなことに挑戦して、前進していく岸菜さんを応援しています。








