5年生 特選
モネにみちびかれる新たな心
呉中央小 五年 木 下 郷 花
「わぁ、すごい!」
と、てんらん会の絵を見て、私は思わず声をあげた。
私がクロード・モネを知ったのは、四年生の時だった。お母さんからある時、
「モネの絵を見に行ってみる?」
と言われた。私はそれまで、人のかいた絵を見るのはたいくつでおもしろくないと思っていたので、あまり乗り気ではなかったが、行ってみることにした。
ついにモネのてんらん会を見に行く日が来た。建物の中に入ると、さっそく絵がかざられていた。私は一目その絵を見ると、(え、何これ!)と一しゅんにしてその絵の世界に入りこんでいた。その絵はスイレンがかいてある絵だった。(あっそうだ。お母さんがモネの絵はスイレンをテーマにしていると言っていたな。)と、お母さんとの会話を思い出しながら夢中で絵を見ていた。きらきらとかがやく水面で、生き生きとさいているスイレン。(すごいなぁ。こんなに生き生きとしているスイレン。モネは一体どんな気持ちで、このスイレンをかいたのだろう。)と、こんな不思議につつまれていく。そして、いつの間にか私は、絵のかんしょうが好きになっていた。
次の絵を見ると、またスイレン。でも、さっきとは何かがちがった。(何だろう。どちらもスイレンをテーマにしているのに。)また、不思議につつまれた。そして、絵をじっくりとながめた。そして、私は気が付いた。(そうか、気持ちだ!この絵には一つ一つの感情がきざみこまれている。絵にはこんなすばらしさがあったんだ。写真ではあまり表現できない、感情が満ちあふれているんだ。)
私は写真集を見たことがある。写真集を見るのは好きだった。でも今は、絵を見るのが好きだ。写真から感じるのは、写っている物の気持ちや写っている物の説明だ。動物の写真だったら、今えさを食べているよ、とかそんな感じのことだ。でも、絵からは、説明できないほどの、満ちあふれた気持ちを感じる。絵を見ると、かいた人のその時の気持ちと同じ気持ちになれるような気がした。それが大好きになった。
モネの絵は、同じ景色でも、季節が変化するごとに、気持ちも変わるようだった。モネのその時の気持ちによって、同じスイレンでも見え方が変わるので、スイレンのかき方もちがうのではないかと思った。それがおもしろかった。すてきだった。
今、絵を見ている私の気持ちも、色のように、絵のように、変わってきている。心がざわざわする気持ち、うれしい気持ち、悲しい気持ち、いろいろな気持ちが私の心の中をかけまわっている。
一度休けい所に行った。集中して絵を見ていたので、とてもつかれていた。でも、まだまだ絵を見たい気持ちがあふれていた。(次は、どんな気持ちに出会えるだろう。)そんなことを頭の中で思いながら、次の世界へと進んだ。
「わあ、これもすごい!」
と思わず口に出してしまった。でも、本当にそれくらいすごかった。大きな生き生きとしたエメラルドグリーンがかがやいている木。私はその絵を見たとき、ぞっとした。本物の木が、そこにあるんじゃないかと思った。私はその絵を、目から水分がなくなるほどまで見つめていた。
私は、何時間かモネの絵だけを見てきた。ただ絵を見てきただけなのに、すごい発見と新たな心が芽生えてきた。気持ちをもってかいたからこそ、すばらしい絵が出来上がる。モネの絵を見つめているだけで、心がゆさぶられ、自分の中の新たな世界が広がっていく。クロード・モネはそんなことを気付かせてくれた、わたしの心のおん人のような存在になった。
私は今まで、絵のかんしょうがあまり好きではなかった。でも、今では、こんなに大好きになった。モネの他にもいろいろな画家が描いた絵を見てみたくなった。そして、もっともっと新たな世界を見てみたいと思う。これから私は、今はまだ気が付いていない新たな心、新たな世界にみちびかれるかもしれない。未来の心の支えになってくれる作品に出会えるかもしれない。
評
クロード・モネの絵に衝撃を受けた木下さんが、鑑賞して感じた感動や思いを、文章で豊かに表した作品です。
モネの絵から、様々な気持ちを感じながら、鑑賞することを通して、モネの作品のすばらしさだけでなく、新しく芽生えた自分の心とも向き合うことができました。また、「一しゅんにしてその絵の世界に入りこんでいた」「不思議につつまれていく」など、木下さんの心情が鮮やかに表現されています。
モネの絵との出会いによって鑑賞が大好きになった木下さん。これからもいろいろな作品に出会い、新しい世界が広がっていくことでしょう。








