5年生 特選
父と私の交かんイラスト
白岳小 五年 樋 渡 咲 来
(最近、お父さんとしゃべってないなあ。)私の父は仕事などで夜おそくに帰ってくる。朝も仕事に行くのが早くて、平日はほとんど関わりがない。(何かしゃべるきっかけがほしいな。)と、しばらく考えているうちにひらめいた。(そうだ、絵だ。)
私と父のしゅ味は絵を描くこと。この共通点を上手く活用していけば、話すきっかけが作れるかもしれない。(私とお父さんで絵を描いて交換したら楽しそうだな。そこに一言メモや次に描いてほしい物をリクエストしたら、何か話ができそうだな。)と、思いがどんどんふくらんでいく。私は母に相談してみた。すると、
「その一言メモに、今日あったことも書いてお父さんに伝えてみたら?」
と言われた。それはいいなと思ったので、そのアイディアも取り入れ、いよいよ父と私の交換イラストが始まった。
一回目。まずは私が絵を描いた。私の好きなアニメの絵だ。その絵に、「お父さんはももいろの鍵を描いてね。」とリクエストを添えた。それをファイルへ入れてリビングの机の上に置いた。その翌日のこと。ファイルの中に返事があった。リクエスト通りの絵と「描いたよ。」という一言メッセージがあった。
(わあ。うれしい。初めての交換でどきどきしたけど、上手くいった。よっしゃあ。)
二回目。父からもらった絵がうれしかったので、それに対するコメントを書いた。「上手だったよ。表情がいいね。」と、ドキドキしながら書いた。だってどんな反応がくるかわくわくしたから。そして、自分の絵も描いてファイルへ入れた。その翌日のこと。「上手だね。この絵を描くのは難しかった?」と質問が書いてあった。私はもっとうれしくなった。質問が書いてあり、父とたくさん会話ができると感じたからだ。
こうして何度かイラスト交換が続き、土日がやってきた。今までは、休みの日にお互いに家にいてもあまり会話がなかった。でも、今回はちがった。リビングで朝ご飯を待っているときに、父が話しかけてきたのだ。
「あ、ありがとう。」
「う、うん。」
という会話のみだったが、うれしかった。でも少し気まずい空気が父と私の間に流れた。
(今まであまり話してなかったから、突然お父さんに話しかけられても、なんて反応を返したらいいか分からないよ。)という思いからきんちょうと不安で頭がいっぱいになってきた。お父さんは子供のころに漫画家を目指していた。そのこともあってなのか、イラスト交換を重ねるたびに、いろんなアドバイスをしてくれた。それは、私にとってすごく勉強になったし、もっと聞きたいものだったので自然と会話も増えた。
「もうちょっと背景を描いてみたらいいんじゃない。」
「頭の形をもう少し小さくしてみたら。」
「手のバリエーションをもっと増やしてみたらいいんじゃない。」
そういうやり取りをしていくうちに、父への尊敬の気持ちが強くなっていった。納得のいくアドバイスを今まで周りの人からもらったことがなかったが、父のアドバイスは的確だったからだ。
最初は気まずかった父との会話も、どんどんはずみ楽しい時間となっていった。何を話せばよいか分からず、言葉につまっていたころがなつかしい。今では、楽しく会話ができるようになったし、平日もどんどん話すようになっていった。私はだれかと会話をするのが苦手だったけれど、このことがきっかけで会話をするのが少し得意になった気がする。
父との会話がはずむようになった今、次なる私の目標は、友達との会話だ。私は絵を描いたり文章を書いたりすることには自信がある。でも、会話となると話は別だ。かくときは時間をかけて内容を考えることができるが会話は瞬時に反応を返すことが求められる。それが私には緊張の種となり、友達と会話するのが難しいことがあるのだ。そんな自分を乗り越えて、クラスや学年の友達とたくさん会話のできる自分になりたい。話したいことはたくさんある。自分の好きなことや興味のあることだと、緊張せずに会話ができる。だから友達と会話をするときも、父としている交換イラストのように、共通の話題で話を進めることができればきっと会話がはずむ、楽しい時間になるはずだ。そのためにも、私が父にしたように、友達にも私から話しかけていきたい。そして友達の話したいことも聞きたい。
私と父の交換イラストは、父との関係を深めてくれただけではなく、友達との関係づくりについて見直すきっかけをくれた、私にとって大切なものだ。
評
(最近、お父さんとしゃべってないなあ。)どきっとする書き出しで、突然樋渡さんの世界へ読者を引きこむ作文です。
そんなお父さんと、得意なイラストを通してやり取りを重ねるうちに、会話が増えていき、さらに友達との関係を見直すことへと思いが高まっていく様子を多くの心内語で表現しています。
また、そう感じた理由を言語化することで自分の心の変化をしっかり見つめることができました。
人とのやり取りはきっかけと少しの勇気でどんどん変化し深まります。多くの出会いを今後も楽しんでくださいね。








