作文コンクール 
くらしの文集

 

5年生の作品

5年生  特選

あせかき給食委員会

横路小 五年 藤 崎 心 奈

「みんな早くかた付けに行こう。」
四年生の私は、昼休けいに早く遊びに行きたくて、牛にゅうかごを持って急いだ。
「ありがとうございます。」
と言って牛にゅうかごをわたすと、
「はい、ありがとうございます。」
と、あせをかきながら笑顔で応えてくれた。そのすがたがとてもすてきで、そんなたん当の人にあこがれて、(来年の委員会は給食委員会に入ろう。)と、心の中で決めていた。
 私は五年生になり、いよいよ学校のサブリーダーだ。委員会の希望用紙が配られると、まよい無く「給食委員会」と書いた。
「なるべくみなさんの希望をゆう先しますが、重なった場合は、第二希望になる人もいますからね。」
と先生がおっしゃった。(第一希望が通るといいな。)心の中でずっとつぶやく。そして、
「藤崎さん。給食委員会です。」
発表されたこの言葉を聞いて、跳びはねたい気持ちだった。(四年生のときの、あのたん当の人みたいになる。)その一心だった。
 給食委員になり初めての給食放送。全校のみんなが、この給食放送を聞く。私はすごくきんちょうした。自分に(できる、できる。)と言い聞かせるも、足のふるえが止まらない。友達の言葉が終わり私の番が来た。体をぎくしゃくさせて、マイクの前に立つ。
「これから給食委員会からの放送を始めます。」
思い切って言った。そしたら、なぜか不安だった気持ちがすっと消え、少し楽しい気持ちに変わった。どんどん話すごとに(うわ、放送楽しい。)とさえ思った。
 次は、ご飯ケースと牛にゅうかごの整とん、牛にゅうパックのしょ分、といった後かた付けのお手伝いだ。全校のみんながやって来るのは十二時五十五分。だから、五十分に行って後かた付けの準備をしなくてはならない。(もうすぐ時間だ。)と思い時計を見ているとキーンコーンカーンコーン。
 チャイムが鳴った。そうすると、一クラスがやって来た。その後も三クラスほど来ただけで、ゆっくりしていたら、いきなり何クラスも続けて来てあたふたした。牛にゅうパックとストローを受け取り、つくえの前のごみぶくろにすてる。飲み残しの牛にゅうは、こぼれないようにしん重にせん用のかごにならべる。この作業が終わるまで、牛にゅうを持ってきた人は、牛にゅうかごを差し出して待っている。人がどんどんならぶから、よけいにあわてる。(やばい。早くやらなきゃ。)ようやく落ち着いたときには、あせがふき出していた。どっとつかれを感じながら、給食委員会の初めての活動が終わった。
 しばらくたって、また私達の給食放送と後かた付けの番が回ってきた。正直、前回の活動で、大変だったことを体が知っていたから行きたくなかった。
「ほら、早く準備して行かなきゃ。全校のみんなのため。」
と先生が放送委員の人達に言った言葉が、聞こえてきた。「全校のみんなのため。」この言葉が頭に残る。思い出すのは、四年生のときに見たあのたん当の人のあせだ。
「よし。」
 急いで放送室に向かい、給食放送を始めた。すべての放送が終わったのは三十五分。すぐに教室にもどって給食を食べる。
「おかわり食べられる人?」
 先生のよびかけに、思わず手を挙げかけたけれど、思いとどまった。(五十分には後かた付けの準備に行かなくちゃ行けない。おかわりをしたら、時間が無くなっちゃう。)当番の日は食べる時間がものすごく短いのだ。
 キーンコーンカーンコーン  五十五分。後かた付けの場所に立った。今日はいつもとちがって、最初から五クラスほどがいきなり来た。一時くらいになると、たくさんのクラスが行列になり、まさにねこの手も借りたいじょうきょうだ。今日もふき出てくるあせ。そでであせをふいていたら、
「ありがとうございます。」
と、四年生の人が言ってくれた。
「はあい。」
と返す私。これはまるで、あの一年前のときと同じやりとりだ。その後も、いろんな人が、
「お願いします。」
「ありがとうございます。」
と私に投げかけてくれる。いそがしくてもやもやしている気持ちが、きりが晴れるようにすうっと消えていく。
 今、私は、六年生になったら、委員長になって活動したいと思っている。そのためにも、もっと後かた付けをスムーズに行ったり、自分からみんなに「ありがとう」の言葉をかけられるようになりたい。
 やりがいがあるからこそがんばりたい、あせかき給食委員会だ。

五年生になって初めての委員会活動。不安や困難を抱えながらも、自分の役割を試行錯誤しながら全うしようとする姿が丁寧に描かれた作品です。
 四年生のときに憧れた給食委員と自分とを重ね合わせながら、過去から現在、未来へとつながっていく展開が巧みです。また、「体をぎくしゃくさせて」「あせがふき出していた」などの書き手の心情が鮮明に浮かぶ表現により、読み手を惹き付けます。
 来年も続けて取り組みたいと意気込む藤崎さん。その姿に憧れる新たな「あせかき給食委員」がきっとこれから誕生することでしょう。

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