作文コンクール 
くらしの文集

 

4年生の作品

4年生  特選

はじめまして、ひいばあちゃん

阿賀小 四年 切 川 琉 誠

「琉誠、今からひいおばあちゃんに会いに行くよ。」
 日曜日の朝、父がとつ然そう言った。同じ阿賀に住むそ父母にはよく会っていたが、ひいばあちゃんには生まれてこれまで一度も会ったことがなかった。
「ひいばあちゃんって、どこにおるん。だれのお母さんなん。」
父にたずねると、
「切川のおばあちゃんのお母さんが、ゆいいつ生きている琉誠のひいばあちゃんで。長い間老人しせつに入っているんよ。」
と答えてくれた。
 父が運転する車にそ父母も乗せて、この日予定のなかった四人で焼山にある「温養院」という老人しせつを目指した。
「琉くんは、ひいばあちゃんに会うのは初めてじゃね。会いに来てくれたら、きっと喜ぶよ。」
 そ母は、いつもより少しつかれたような、少し悲しそうな表じょうで話した。どうしてそんな表じょうだったのか、ぼくにはよく分からなかった。
 しせつに着くと、かいご士のお姉さんが明るくあいさつをしてくれた。
「さっそく会いに来てくれたんですね。今、うっすらと目を開けていますよ。」
 ぼくは、ひいばあちゃんの部屋まで、と中の部屋をちらりと見ながら進んで行った。かみの毛が白いおばあちゃんや車いすに乗ったおじいちゃんたちが体そうをしたり、ゆっくりと食事をしたりしていた。本当に老人しかいなかったし、みんなかいご士さんの手伝いがなければ、立ち上がったり移動したりできない様子だったことに、少ししょうげきを受けた。
「はじめまして、ひいばあちゃん。琉誠と言います。」
 元気よく、そうあいさつしようと心に決めていたが、ベッドで横になっているひいばあちゃんを見ると、言葉がつまって出て来なくなった。父やそ父母、自分の顔色にくらべて、明らかにこい黄色の顔をしていたからだ。
 しせつに向かうと中、そ母から、
「ひいばあちゃん、もう長くは生きられないかもしれないんよ。」
つい先日までゼリーと水は口に入れられていたが、今は何も受けつけなくなったと聞いた。父が、
「ばあちゃん、聞こえるか。ひ孫を連れて会いに来たよ。」
ゆっくりやさしくはっきりとした声で、ひいばあちゃんの耳元で話しかけるが、ほとんど反応はなかった。
 大きくかたを使って、一回一回全身で息をしているひいばあちゃんのすがたを見て、
(ひいばあちゃん、生きるために一生けん命がんばっているんだ。)
ぼくはなみだが止まらなくなった。
「ひいばあちゃん、琉誠だよ。はじめまして。ぼくは、ひ孫の琉誠だよ。」
気がつくと、だれよりも近くでひいばあちゃんによびかけていた。少しでも長く、生きてほしいと思いながら。
(ひいばあちゃん、がんばれ。)
何度も心の中で願った。
 暑くなってきた六月の夜、ひいばあちゃんは天国へ旅立った。
 一生けん命生きようとがんばっていたひいばあちゃん。ぼくも、たった一つの命をせいいっぱい生きていきたい。

 初めて目にした老人施設に対する切川さんの困惑した気持ちに、誰しもが共感を覚えるのではないでしょうか。
 そんな中においても、病と闘うひいおばあちゃんにあたたかく声をかける切川さんの強さと優しさが、読み手の心にじいんと伝わってきます。
 共に過ごせた時間は短かったかもしれませんが、ひいおばあちゃんやその他のご家族、何より切川さんにとっては代えがたい大切な時間となったことでしょう。

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