作文コンクール 
くらしの文集

 

4年生の作品

4年生  中国新聞社賞

小さなゆう気とぼくのゆめ

広南小 四年 原 尻 櫂 史

 ぼくはバスに乗るのが大好きだ。特に運転士さんが運転している様子を見るのが楽しい。だから、バスに乗るときは、できるだけ運転席がよく見える場所に座ったり立ったりして、運転の様子を観察している。ドアの開け閉め、バスカードの読み取り、ミラーのかくにん。どれも真けんでかっこいい。しょう来は、ぼくもバスや電車の運転士になりたいと思っている。
 ぼくは週に二回、じゅくに通っている。家からじゅくまではバスに乗って行く。いつものように、その日もバスに乗ってじゅくに向かっていた。バスの中ではいつも通り、運転士さんの動きをこっそり見ながら、
(今日はどんな運転をしているかな。)
とわくわくしていた。
 バスが目的地に近づき、そろそろおりようと思って立ち上がった。お金をはらうために機械の前に立ったとき、運転士さんが少し困ったような顔をしていた。なんだか、料金を計算するICカードのそう作がうまくいっていないようだ。
(ああ、これはどうするんだったかな。)
という感じで運転士さんは何度かボタンをおしていたけれど、思うように動かないようだった。ぼくは、それを見て、
(あ、このそう作なら知っているかも。)
と思った。実は以前、同じようなことがあり、どうやってそう作するか覚えていたのだ。でも、ぼくはまよった。
(子どもが口を出したら、でしゃばってるって思われるかな。)
(運転士さんに悪いかな。)
 そんな気持ちが頭の中をぐるぐる回った。運転士さんも困っていて、バスの中がなんだかシーンとしていた。
だけど、
(このままじゃだめだ。)
と思った。そこで、ぼくは小さな声で言った。
「少し、かしてください。」
運転士さんはびっくりしたような顔をした後、にっこりして、
「じゃあ、ちょっとやってみて。」
と言った。ぼくはゆっくりとボタンをおした。間違えたらどうしよう、こわれたら大変だ、と手がふるえた。それでも、勇気を出して「人数精算」というボタンをおしてみた。
(あれ、二百円と出てきた。子どもだから百円と出てきてほしいのに。)
ぼくと運転士さんは苦笑いをした。もう一度試してみた。けれどもまた二百円。三回目、ゆっくりと深こきゅうをして、もう一度同じそう作をしてみた。すると、「百円」ついに出てきた。
「やった。」
ぼくは小さな声で言った。
「ありがとね。おじさん分からんかったわ。」
そう言って運転士さんは、ぼくの手をにぎった。ちょっとびっくりしたけれど、その手は温かくて、なんだかうれしい気持ちがじんわり広がった。
 ぼくはバスをおりた。しばらく歩きながらさっきのことを思い出していた。だれかが困っているとき、知っていることをこわがらずに伝えることはいいことなんだ。こわくても少しの勇気で人の役に立てる。
 ぼくはしょう来、上手に運転するだけではなく周りの人の気持ちにも気付ける、困っている人を見つけたら、小さな勇気を持って助けられる、そんな運転士になりたい。

 自分の夢であるバスの運転士。実際にバスに乗った時、その運転士さんが困っている状況に遭遇します。自分に何とかできるかもしれない、しかしそれでは運転士さんに悪いのではないか、葛藤する心の動きが心内語を効果的に使い生き生きと表現されています。
 文章構成もよく考えられており、冒頭で取り上げた運転士の仕事内容への興味関心が、中盤の展開の緊迫感をより高めています。
 日頃から自分の夢を大切にしているからこそ得られたすばらしい経験です。技にも人にも思いを馳せる原尻さんのこれからが楽しみになる作品です。

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