作文コンクール 
くらしの文集

 

3年生の作品

3年生  特選

はじめてのちりょう

吉浦小 三年 平 室 優 月

「これは銀ばにしなくてはいけないね。」
 はいしゃの先生にそう言われて、わたしはドキッとした。
 今までむしばもほんの少しだったから、白いつめものですんでいたのに、なん度もそれが取れてしまうので、とうとう銀ばにすることになった。
「はをけずって銀ばを入れるよ。」
と先生に言われて、ドキドキが大きくなった。
(はをけずる。どれぐらい。どうやって。)
 わたしは思わず、となりにある先生の道具をじっと見た。
「いたいん。」
先生に聞いてみると、先生は、
「たぶんそこまでいたくないよ。」
と言ってくれたので、(だいじょうぶ。もう三年生だし、わたしもお姉ちゃんだし、泣いたりしない。)そう思いながら、いすからしずかにおりた。はをけずるのは次の日になった。
 学校がおわり、とうとうはいしゃに行く時間になった。
 いすがすうっと上がって、白いライトがピカッとついた。わたしは、光を見ながら思いきり口を開けた。先生が、
「けずるときにべろが切れるかもしれんよ。したを動かさないで。」
と言った。
「えっ。はじめて聞いたよ。こわい。したが切れたらどうしよう。」
目をぎゅっとつむって、したに力を入れた。
ウイーン。ギー。ギギ。
すごくうるさい音が口の中でなっている。はがものすごいいきおいでけずられているような気がした。(どこまでけずっているんだろう。いつまでけずるんだろう。)
 音がぴたっとやんだので目を開けた。もうおわったのかな。
「もう少しけずるところがあるけど、それはまた明日。次は銀ばを作るよ。」
先生がそう言ってほっとしたけれど、
「えっ、まだけずるんだ。」
と少しかなしくなった。でも、先生が言ったように、そこまでいたくなくてよかった。明日はもう大じょうぶかな。
 一週間たって、銀ばを入れる日がきた。
「かんでみて。」
と先生が言ったので、ゆっくりかんでみると、かんでいるようないないような、へんな感じだ。近くにすわっているお母さんにそのことを言うと、
「なれたらへんじゃなくなるよ。はじめはなんかへんな感じじゃけど。」
とわらっていた。
「そこはぬけるはだから大じょうぶ。」
そう言われて次こそぜったいむしばにしないようにしようと思った。もうあの「ギー」を聞かないようにするために。

銀歯を入れるという日常の中の初めての経験を多くの会話文や心内語を用いて、上手に表現されています。
 歯をけずっている時の様子を、「いすがすうっと上がって」「目をぎゅっとつむって」「ウイーン。ギー。ギギ。」「音がぴたっとやんだ。」など臨場感あふれる言葉を豊かに使って表現しており、その場面が目に浮かぶようです。
 終わりには、もう絶対に虫歯にならないようにするぞという平室さんの強い決心でしめくくられているところもとてもほほえましく思える作品です。

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