作文コンクール 
くらしの文集

 

6年生の作品

6年生  特選

統合で変わったぼくの未来

吉浦小 六年 福 田 賢 史

「六年生は、最高学年として、悔いの残らないように全力でがんばります。」

 吉浦小の代表として運動会で誓いの言葉を述べるぼくに、吉浦小の仲間三百三十八人全員の視線が、まっすぐ向けられている。

 二年前の四年生の四月。突然、校長先生が

「落走小は、吉浦小と統合することになりました。」

と話され、ぼくは言葉を失った。(うそだ。統合するなんていやだ。)ぼくは、落走小が大好きだった。今まで統合なんて一度も考えたことはなかった。(思い出がたくさん詰まった校舎とお別れだなんて。)

 落走小は、良いところが数え切れないほどある学校だ。全校児童は四十四人。顔はもちろん、全員の名字と名前も言える。皆と友達だ。遠足も皆一緒。児童朝会遊びも。運動会は、一人一人の出番が多く、ぼくもフル出動だった。幼稚園児や地域の方々も参加し、狭い校庭は、人でいっぱいになる。まるで、カープの優勝祝勝会のような盛り上がりだった。地域の方々も皆顔見知りだ。

「おはよう、賢史君。今日も元気か。」

毎朝、笑顔で名前を呼んであいさつしてくださる。(今日も一日がんばるぞ。)ぼくは、自然に力が沸いてきた。

 自分からあいさつする、感謝の気持ちを忘れないなど、人としての大切なことを皆が守り続けている地域にある、ぼくにとっては、世界で一番の学校だった。

 四年生の冬。統合前に吉浦小で交流会があった。吉浦の四年生は五十人以上。ぼくたち落走組は、たったの五人。ふだんは、大好きなドッジボールだったのに、あまりのきん張に、頭は真っ白。力も出なかった。(こんなんじゃ、ぼく、吉浦小の皆と仲良くなんてなれない。)

 ぼくは、もともと人見知りな性格だ。昔から、友達を作るのは苦手だった。そんなぼくでも、三歳のころからずっと一緒に過ごしている落走の仲間となら、何でも話せる。

 五年生の春。とうとう吉浦小に初めて登校する日が来た。お母さんが、

「賢史、大丈夫。ちゃんと友達できるけん。いってらっしゃい。」

と、はげましてくれた。初めてのバス通学。

 プシューッ。

バスのドアが開く音も、すごく大きな音に聞こえた。胸がどきどきして、息苦しくなった。バスから降りて、吉浦駅から学校まで歩いた。学校に近づくにつれて、心臓が爆発しそうになった。

 教室に入ると、ぼくはなるべく吉浦小の皆を見ないようにして席に座った。その時、

「ぼく、小加本そうたって言うんよ。よろしくね。」

一人の男の子が、ぼくの方に近寄って、話しかけてくれた。

「ぼく、福田賢史。よろしく。」

ぼくも、せいいっぱい明るい声で、その友達の目を見て自己紹介した。(よかった。吉浦小にも声をかけてくれる人がいる。吉浦小にもなじめるかな。)ぼくは、少しだけ安心した。

 でも、吉浦小での五年生の日々は、ぼくにとって不安の続く日々だった。授業で自分から発表ができない。落走小では、一時間に何度も発言できていたのに。まわりに圧倒されてどうしても手を挙げられない。(がんばりたいのに、がんばれない。)もどかしかった。

 六年生の四月、

「福田君、運動会の誓いの言葉で、代表に立候補してみない。」

担任の先生が声をかけてくださった。(どうしよう。がんばって代表になったら、友達が認めてくれるかな。自信がもてるチャンスかも。)ぼくは挑戦することに決めた。

 オーディションの日がやってきた。

「全力でがんばります。」

ぼくは、一年生校舎の向こうの山に向かって力いっぱい声を出した。

「福田君、すごい。そんなに大きな声が出せるんじゃ。びっくりしたあ。」

皆が、ほめてくれた。(やったあ。認めてくれた。)ぼくは、なんだか自信が沸いてきた。代表に選ばれたぼくは、授業中も前のように自分から手を挙げて発表できるようになった。

 一年生を迎える会では、「猛獣狩り」の吉浦バージョン「吉浦博士になろうよ」ゲームを行った。吉浦小の良いところを全校で歌って踊る。ぼくは縦割り班の先頭で、こぶしを振り上げて踊った。(吉浦小にも良いところがたくさんある。いい学校だ。)自分からあいさつしてくれる。困っていると、助けてくれる。がんばれば認めてくれる仲間がいる。

「吉浦小に行こうよ。吉浦小は最高です。」

全校皆が心を一つにして歌った。歌いながらぼくは、最高学年として、吉浦小の良いところをさらに増やしていこうと心に決めた。

大好きだった学校に通えなくなった寂しさと、新しい学校へ通うことへの不安な思いが細かく描写されており、福田君の統合に対する複雑な心情が読み手によく伝わります。
 そんな福田君が、学校の代表として運動会の誓いの言葉を言ったことをきっかけに、新しい学校でも積極的に自分らしさを出せるようになっていきます。
 不安を抱えながらも、新しい学校の良さに気付き、前向きに生活してこうとする福田君の姿に清々しさを感じる作品です。

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