作文コンクール 
くらしの文集

 

4年生の作品

4年生  特選

手と目で伝え合えたら

吉浦小 四年 吉 田 海 凪

「耳が聞こえていません。」

 子どもの時、お母さんは三十九度をこえる高い熱を出しました。病院で手当てをしましたが、名前をよんでも返事をしなくなりました。調べてもらったお医者さんの言葉を、おばあちゃんは信じたくなかったそうです。お母さんは、二さいで音を失ったのです。

 わたしは、今まで耳が聞こえない理由を聞いたことがありませんでした。お母さんがいやな気持ちになるかもしれないと思ったからです。お母さんに聞く勇気は出なくて、あるとき、お母さんがいないところでお父さんにたずねました。

「お父さん。どうして、お母さんは耳が聞こえないの。」

 お父さんは、お母さんが二さいで耳が聞こえなくなってから今日までのことを話してくれました。伝えたいことがあっても手話を分かってくれる人がいなくてこまったことを聞き、(お母さんは苦労しているんだな。)と思いました。お父さんが続けて言いました。

「お母さんをかわいそうだと思っているか。」

お父さんのしつ問に正直に答えていいのかとまよいましたが、わたしは、正直に答えました。

「うん。かわいそうだと思う。」

お母さんは、わたしや家族の声が聞こえません。市役所の仕事は手話通訳の人がいないとできません。わたしには、耳が聞こえないためにお母さんが困ることがたくさん思いうかぶからです。

 すると、お父さんが言いました。

「お父さんは、お母さんをかわいそうに思ったことはないよ。」

わたしは、おどろきました。お父さんもわたしと同じようにお母さんをかわいそうに感じていると思っていたからです。

「なぜ、かわいそうだと思わないの。」

お父さんに理由をたずねました。

「だって、お母さんは、耳が聞こえなくても仕事をしているし、お母さんとしての仕事もしているだろう。だから、かわいそうだと思ったことはないよ。」

 それを聞いて、(たしかに、お母さんは手話通訳の人に助けられながら、くれ市の人のために仕事をしている。家でも、そうじやせんたく、食事づくりなど、家族のために一生けんめい働いてくれている。)と思いました。

「耳が聞こえなくても、お母さんはがんばっているんだね。かわいそうじゃない。」

 わたしは、お父さんの話を(なかないで聞こう。)と思いがまんしていたけれど、さい後になみだが出てきました。(お母さんはみんなに支えてもらっているだけでなく、お母さんもみんなを支えている。)と気がつきました。

 わたしは、お母さんに、お父さんに聞いたことやわたしが思ったことを話しました。

「今はみんなが助けてくれる。しあわせよ。」

と、お母さんはえ顔で話してくれました。わたしも、(お母さんみたいな人になりたい。)と思いました。

 今わたしは、手話の勉強をしています。

「手話は、耳が聞こえない人の助けになるよ。」

と、お母さんにすすめられたからです。今までもお母さんと話をする時は、かんたんな手話を使ってきました。(でも、もっとくわしく、よくわかるように話したい。そして、お母さんのように人のためになる仕事をしたい。)と思うようになりました。

 だから、手話辞典を使って五十音を練習しています。でも、むずかしくてなかなか覚えられません。けれど、がんばって練習しています。しょう来は手話通訳の仕事について、耳の聞こえない人を助けたり、手話をみんなに広めたりするというゆめをかなえたいからです。手話ができる人がふえて、耳が聞こえない人も聞こえる人も、自ぜんに自分の思いが伝え合えるような日がきてほしいです。これからも手話の勉強をがんばります。

読み終えたとき、温かく強い家族の絆が伝わってくるような作品です。

 耳が聞こえないお母さんのことを、「かわいそう」と思っていた吉田さんが、お父さんの言葉やお母さんの姿を見つめ直すことで、「お母さんのような人になりたい」と自分で答えを見い出すまでの心の葛藤が素直に表現されています。

 作品を通して、言葉のもつ深い意味を考えさせられるとともに、前向きに成長していく吉田さんから、大切なメッセージを受けとった気持ちになりました。

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