作文コンクール 
くらしの文集

 

4年生の作品

4年生  中国新聞社賞

人の役に立つ人

広南小 四年 濵 田 心 晴

「じっち、すごくきれいになっとるね。」
 じっちとは、わたしのおじいちゃんのことです。いつも元気いっぱいでいろいろな話をしてくれる自まんのおじいちゃんです。じっちは、自分で作った土ならしの道具をトラックで引っぱり、はい校になった小学校のグラウンドを平らにしていました。雑草が生え、少しでこぼこしていたグラウンドもじっちの特製土ならし機でみるみるうちにきれいになっていきました。
(じっちはすごいなあ。)
 私はそんなじっちのことを、おさないころからそんけいしていました。
 以前、いつものようにグラウンドを土ならししていたときに、ぎ問がうかんできました。
(じっちは、グラウンドを使っていないのにきれいにしているのは何でじゃろ。遊んでいる人がしたらいいんじゃないかな。)
私が考えていると、横にいたお父さんがじっちのひみつを話し始めました。
「じっちは、土ならしももちろんだけど、人や地域のためにいろいろなことをやっているんだよ。」
私は興味しんしんに耳をかたむけていました。
「はい校になった学校や校庭が汚れてしまったりなくなったりすると、地域の人が集まる場所がなくなってしまうだろ。だからじっちは地域の方といっしょに協力して校しゃ・体育館・校門、そしてグラウンドもきれいに維持・管理して、だれもが気持ちよく使用できて、楽しく集まれる場所にしているんだよ。」
話を聞いていくうちに、いつもは何気なく見ていたじっちの土ならしも、すごくほこらしく感じてきました。その他にも地域の人とのふれあいの場をつくり出そうと、ふれあい小坪文化祭を地域で開いていること、そして、その祭りを三十年以上続けていることなど、今まで知らなかったじっちのひみつをたくさん聞きました。
(じっち、こんな思いでいつも土ならしやってたんだ。だれかのために、地域のためにがんばれるってすごい。かっこいい。わたしもじっちと同じように役に立つこと、やりたい。ぜったい私にできることもある。)
気付いたころには常に、人の役に立つことを探し続けている自分がいました。
 なかなか見つけることができずにいたある日、いつもの学校の帰り道、そのしゅん間はとつ然やってきました。私は、ぎゅうぎゅうのバスの中、やっとの思いで見つけた席に座っていました。
 すると、大きな荷物を持ったおばあさんが立っていました。今までの私であれば、そんなに気にならない光景でしたが、
(どうしよう。助けなくちゃ。)
心の声がはっきり聞こえていました。しかし乗っている人たちは、ようやく取れた席なのでゆずる人はだれもいません。
(私が助けなきゃ、声かけなきゃ。)
想いと同時に声が出ていました。
「ここ、すわりますか。」
おばあさんは、少し動ようしたようだったけれど、すぐに、
「やさしいんじゃねえ。ありがとう。」
と笑顔いっぱいで言ってくれました。私はうれしくて、うれしくて飛びはねたい気持ちになりました。そして、それと同時に、
(じっちも、こうやって人のために、いつも動いているんだ。)
じっちの顔がうかんできて、私も自然と笑顔になっていました。
 自分よりも、だれかのために行動することは、とてもすてきなことでした。なかなかかんたんにできることではないけれど、私は、これからも自分にできることを進んでやっていこうとちかいました。
 そんな私は、今日も、人の役に立つことを探しながら生活しています。

小さいころから尊敬している自まんのおじいちゃん「じっち」の存在が、濵田さんの生き方に大きなえいきょうを与えてくれたことが分かる作品です。
 地域のために、一生けん命力を尽くしている「じっち」の思いを聞き、自分も同じように人の役に立つことをしたいという強い思いをもちつつも一歩踏み出せない私。しかし、葛藤しながらも行動にうつしたすがすがしさや誰かのために自分ができることをやっていこうという決意が、鮮明に表現されています。
「じっち」から受けついだ思いを、濵田さんが行動していくことで、周りの人にも広まっていくことを願っています。

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